ガラガラガラドッガーン!
 
「責任者でてこぉーい!」
「おいおい相沢、それじゃ何の責任者だか判らねって」
 
5時間目の最中だと云うのにも関わらず、3-D教室前部のドアが物凄い勢いで開け放たれた。
次いで姿を表したのは、何故だか判らないけど怒りの形相をしている祐一。
そして一応は祐一を嗜めてはいるものの、それだったらまずこの狼藉を止めろと突っ込まれそうな北川。
月間学園内有名人ランキング1・2フィニッシュ(諜報部調べ、報道部発)を決めた二人のどちらをも皆は知っていたが、まさか自分のクラスに乱入してくるとは思ってもいなかった。
極一部を除けば良くも悪くも騒動とは縁遠い3-D。
英語担当の新任教師である柏木ちゃんまでもが状況に対応しきれず、目を丸くして時を止められていた。
 
「イチゴムースだイチゴムース! イチゴムースの責任者はどいつだ!」
「通訳するとアレだ。 とりあえず溝口、御指名」
「お、俺ぇ?」
「学食委員会の会長はお前だろ? なに、話しはすぐ終わるからよ」
「バカ言え、今は授業中だろ。 話しなら五時間目が終わった後でいいべ」
 
イチ高校生として、溝口の言い分は至極まっとうなモノだった。
もっとも他の、例えば数学の授業だったら彼も二つ返事で教室を出ていっただろう。
何故ならば、今の溝口にとって大切なのは『5時間目』ではなく、『我等が可愛い柏木ちゃんの授業』なのだから。
少なくとも今日の溝口は、柏木ちゃんのたどたどしいリーディングを聴く為に学校に来ていた。
だが。
 
「授業? っは、授業だと?」
 
嘲笑う様に言い放った祐一の顔には、これ以上なく酷薄な笑みが張りつけられていた。
しかし2秒後、その笑顔の一切を顔面から叩き出し、代わりに鬼の様な形相で黒板を思いきりぶっ叩いて叫んだ。
 
「お前は! 授業と! イチゴムースの! どっちが大事だと思ってんだーっ」
 
『そら授業だろう』とクラスの九割が思ったが、誰一人として口に出したりはしなかった。
無言を祐一の言葉の肯定だと捉えた柏木ちゃんが、自分の授業をイチゴムース以下に位置付けられてかなり激しくしょげていたのは、また別のお話し。
兎にも角にも溝口は教室から連れ去られ、残された人々はただただ呆然とするより他なかった。