イチゴムース?
ああ、それなら俺の耳にも届いてるよ。
って言うかな、お前等が学食で騒ぐ前からそんな事は知ってたさ。
何しろ学食に関する情報で俺の耳に入って来ないものは無いからな。
 
第一の情報が入ってきたのは、俺が学校に来てからすぐの事だった。
学食のおばちゃんからな、確認の電話が入ってきたんだ。
「イチゴムースがまだ納品されていません」って。
ただ、その時は大した問題だとは考えてなかった。
当然だろ?
事故、渋滞、迷走。
どれだって日常の中には多々含まれている問題だし、開店にはまだ時間があったからな。
だから、俺はおばちゃんに『通常通りの業務』を指示した。
 
次に情報が入ってきたのは三時間目の休み時間だな。
内容は朝と同じく、「イチゴムースが納品されていません」
ここに至って流石に俺もおかしいと思った。
だから一応は電話したさ、イチゴムースを卸してる提携の会社、『クヌギ食品』に。
返答はこうだ。
「今日もトラックは定時に工場を出ました」
 
工場に落ち度は無い。
だが俺たち学食側にも落ち度は無い。
って事は、答えは一つしかないだろう。
手っ取り早く言えば、『運び屋』がヘマこいたんだ。
開店直前まで、そして開店してからもイチゴムースの到着を待ち続けたが、結局『ブツ』は来なかった。
間違えないで欲しいのは、俺達は決して意図的にイチゴムースの欠落を隠してた訳じゃないって事だ。
既に委員会の広報担当には今日の件に関しての謝罪と、代償を約束するプリントの作成を支持してある。
水瀬さんにも言っとけ、イチゴムースは明日になれば二つ食べられるって。
 
判ったか。
これが俺の、学生食堂会館管理運営委員会会長の知っている全ての情報だ。
隠し立てをするような事でもないし、したとしても俺に得は無い。
もう良いだろ。
早くしないと柏木ちゃんの授業が終わっちまう。
 
あぁそれとな、相沢。
もう一つ、水瀬さんに言っといてくれよ。
少し時期外れだけど、来月の学食は『イチゴ祭り』だってな。
結構無理して通したんだぜ、この企画。
何でかって?
バカ、普通訊くかよそーゆー事。
じゃあな。