「あ…いや、お父様っ! 放して、ください…」
「嫌じゃない。 佐祐理、大人しくしなさい」
「だ、だってお父様……あぅ…だ、ダメですそんな…」

倉田家の一室に悲しく響く、必死に哀願を続ける佐祐理の声。
既に涙が飽和状態まで溜まっているその大きな瞳には、まるで幽鬼のような形相をした父親の双眸が映り込んでいた。
それは、佐祐理のよく知っている普段の父親のソレではない。
何を犠牲にしてでも心に決めた事をやり通すと云う悲壮な決意を抱えたそれは、噎せ返るほどの雄の雰囲気に彩られていた。

「裾をまくりなさい。 自分でたくし上げるんだ、佐祐理」
「そんな……許してください…それだけは…」
「早くするんだ」
「……は、ぃ…」

有無を言わせぬ強い語気。
何よりも、生まれてから十八年間もの間『父親』として接してきた人間からの命令。
いかに受諾しがたい事柄だとは言え、佐祐理にそれを断る術は残されていなかった。

二人の息遣いのみが支配していた部屋の中に、微かな衣擦れの音が淫靡に響く。
自らの手でフレアスカートの裾をつまんだ佐祐理は、震える指でゆっくりとそれをまくり始めた。
折れそうなほど華奢な足首があらわになり、次いで白雪のようなふくらはぎが外気に晒される。
しかし、そのまま一気にたくし上げられると思っていたスカートは、膝下数センチと云う所で一度その動きを止めた。

「どうしたんだ佐祐理。 そこで止めていては意味が無いだろう」
「………」

肉親とは言え、自らの下半身を異性に見せることに対する羞恥のためか。
それとも、自分が今から実の父親に何をされるのかと云う事を思っての恐怖心からか。
佐祐理は、唇を噛み締めながら必死に涙を堪えていた。

怖い。
逃げ出したい。
でも、たとえここで逃げられたとしても、その後の事を考えると足が動かない。
未だ自分一人の力で生きていくことができない学生である佐祐理にとって、父親の存在はなくてはならぬものであった。
だから、逆らえない。
どれだけ嫌な事であっても、耐えなくてはならない。
佐祐理は、再びスカートの裾を上へと持ち上げ始めた。

「ほう……もうこんなに水気を帯びているじゃないか。 いけない子だな、佐祐理は」
「ぃ、あぅっ! だ、ダメですお父様! 触らないで!」
「隠すんじゃない。 よーく見せるんだ佐祐理、ほら!」
「い、いやぁっ! あ、いや、だめ…だ、めぇ…です…」

佐祐理の制止の声を無視し、父親は強引にその部分に指を這わせた。
そこは乳房とも太腿とも全く異質な感触を持った、微かな湿り気を帯びた緋色の裂け目。
軽く指でいじられた、ただそれだけの事であっても、佐祐理の身体は情けないほど敏感な反応を示してしまっていた。

「さて……こんな事になっている以上、佐祐理にはコレが必要だな」
「ふぁ…あぁっ!? あぁ…いや…嫌です…そんな、そんなっ」

自分の目にしたものが信じられないと云った感じで、佐祐理が喉を振るわせる。
彼女の父親が取り出したのは、凶悪なほど赤黒い色をした棒状の物体だった。
まさかそんな物が自分のアノ部分に、と考えただけで、佐祐理の膝がガクガクと震え出す。
しかしそんな佐祐理の様子を意図的に無視してか、父親は非情なまでの冷酷さでこう告げた。

「さあ、そこに座って私に見えやすいようにするんだ。 何も怖がることはない」
「……うぅ…」
「痛いのは初めのうちだけだ。 力を抜いて。 ゆっくりやると逆に痛いだろうから、一気にいくぞ」
「あ、お、お父様っ、ちょっとまって! まだ心の準備が――」

ぐりっ

「きっ、ぃやあぁぁぁぁぁぁ!!」
「暴れるんじゃない! やりにくいだろう!」
「ぅあっぁああっ、いやっ、痛いっ、痛いですぅっ!」
「痛いのは当たり前だ! まったく、転んで怪我をした膝小僧を放っておくからいつまでも治らんのだ! 化膿までさせかけおって! 大人しく赤チンを塗らせろこのバカ娘!」
「ら、らめれふぅぅぅぅ! ふええぇぇぇぇっ!!」
「ええい! 変な声を出すんじゃない!」

そんなこんなで、今日も雪の降る町は平和なのであった。