忙しい毎日に追われて、何時の間にか忘れていってしまう数々の想い。
 
愛しさ、悲しさ、あの路地裏、可愛い笑顔。
 
春の花、夏の夜、秋の風、冬の星。
 
何よりも大切だった『あの頃』。
 
隣を行く小さな歩幅も、揺れる結い髪も、囁く様に唄われる幼声も。
 
大好きだった。
 
それだけが全てだった。
 
それだけを全てにしていられた。
 
 
 
なのに。
 
 
 
時は、優しくも残酷に全てを押し流し、覆い隠す。
 
丸く錆び朽ちた鈍刃で抉られた痕すらも、時の流れは、易とも簡単に消滅へと誘う。
 
優しくも、残酷に、全てを、無へと帰す。
 
まるで、駸々と降り積もる雪の様に。
 
楽しさも、寂しさも、嬉しさも、悲しさも。
 
始めから何も無かったかの様に、埋め尽くす。
 
訥々と、駸々と、音も無く。
 
 
 
過去は何処まで行っても過去で在り続け、想い出で在り続ける。
 
何をしても過去が覆る事は有り得ず、ヒトがどう抗おうとも時の歯車を逆巻きにする事は出来ない。
 
絶対に。
 
だからこそ、過去は自分の中で特別な意味を持ち続けるのだろう。
 
どんな結果で在ろうとも、それは既に『在った事』。
 
故に、自分を裏切る事は絶対に無い。
 
変わる事もまた、無い。
 
優しくも、残酷に。
 
それが『過去』
 
そして『想い出』
 
どんなに悲しくても、どんなに喜ばしくても、どんなに環りたいと願っても。
 
変えれない。
 
帰れない。
 
そんな事、判り切っていたはずなのに。
 
それなのに………
 
 
 
 
 
様々な想いを乗せた季節が、躊躇いも見せずに過ぎ去る。
 
春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ。
 
花が舞い、夜が明け、風が流れ。
 
俺がこの街に来て、二度目の冬。
 
そして、二度目の雪。
 
街路樹に、ガードレールに、店の軒先に。
 
傘に、肩に、頭にまでもうっすらと白く積もる。
 
空から舞い降りる儚い奇跡の破片は、今度はどんな夢を俺に観せてくれるのだろうか。
 
『それ』は楽しいのだろうか。
 
それとも、悲しいのだろうか。
 
判らない。
 
ただ一つ。
 
何も判らないけれど、そんな俺がたった一つだけ言える事があった。
 
きっと『それ』は……喜劇と呼ぶには悲しすぎて、悲劇と呼ぶには幸せ過ぎる物語になるだろう、と。
 
 
悲劇でも喜劇でもないとしたら、立ち回る役者はきっと皆、泣き笑う道化師なのだろう。
 
楽しくとも泣き、悲しくとも笑い、奥底に眠らせ過ぎた感情を腐らせ、それでも尚、笑わなくてはいけない道化。
 
だとしたら、何と滑稽な幕間劇だろうか。
 
笑える。
 
笑えすぎて涙が出る。
 
時と共に涙は悲しみの色を帯び、笑い泣きは何時しか悲しみに哭いている事になるだろう。
 
哀れな自分を悲しみ。
 
不知の友を嘆き。
 
この世界を形成(ツク)る全ての存在(モノ)が、俺が俺である術を奪おうとしても。
 
それでも君は、俺に笑えと言うのだろうか。
 
この世の中で最も残酷な優しさで。
 
 
 
 
最高の、優しさで。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
Stay by My Side
 
 
第一幕 「雪と桜の舞う街で」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
雪が降っていた。
 
ふわふわと、ゆらゆらと。
 
まるで羽根のように風をその身に受けながら、ゆっくりと、ゆっくりと。
 
だけど、それはまだ十一月の事だから。
 
地面に降り立った雪はすぐに消えてしまう。
 
アスファルトの地面に小さな小さな染みを創り、それすらもすぐに無かった事のように。
 
まるで何も無かったかのように。
 
初めから何も無かったかのように。
 
 
だとしたら少し、悲しすぎやしないだろうか。
 
そこに居たと言う軌跡すら残せないのだとしたら、雪は何のために降るのだろうか。
 
汚れた地面に降り、純白だったその身を汚し、儚く存在を消し、在った跡すら残せない。
 
それなのに何故。
 
 
考えたって判る訳が無い。
 
そもそも雪は自分の意志を持って降っているのではない。
 
地球の大気温の変化によって齎されているだけの、ただの自然現象である。
 
そこに悲しみや儚さを持ち込むのは人間の勝手であり、雪自身には悲しみも感傷も無い。
 
悲しいと思う人の心が悲しいのであり、儚いと思う人の心が儚く在るだけ。
 
ただ、それだけの事なのだ。
 
 
つまり何が言いたいかと言うと――――
 

「なんだって十一月末なのに雪なんか降るんだこの街は! 頭おかしいんじゃないのか?」
 
「そ、そんなこと私に言われてもー」
 

こう言う事だ。
 

初冬のこの時期、雪が降るのは別に珍しい事ではないと名雪は言う。
 
十一月はこの街に住む人間にとっては立派な『冬』なのである。
 
とは言うものの、雪が降れば路面のコンディションも悪くなる。
 
路面のコンディションが悪くなれば当然そこを走る人間の速度も落ちる。
 
走る速度が落ちれば、遅刻の危険性も増す。
 
何と簡単で、悲しい方程式だろうか。
 

「あと何分だっ?」
 
「んー、五分ぐらいかな?」
 

ちなみに本鈴までの時間である。
 
本鈴まで五分って事は、既に校内には予鈴が響き渡っている事であろう。
 
全国の高等学校に通う生徒が寸分違わず脳裏に思い浮かべられるような音色で。
 
キーンコーンカーンコああもう皆まで言うな!
 
今日『も』だ。
 
今日も名雪はすんなり起きてくれなかったんだ。
 
そりゃ本人は頑張っていると言っているし、俺だって人間目覚ましとして粉骨砕身の意気で頑張っている。
 
ならば何故走らなくてはならないのか。
 
答えは簡単。
 
努力がそのまま結果に結びつくのであれば、この世界には幸福しか存在しないだろう。
 
努力が報われないからこそ、暴動だって起こる。
 
革命だって起こる。
 
そして教師だって怒る。
 
嗚呼、なんて悲しい方程式だろうか。
 

「春眠も夏眠も秋眠も暁を覚えなかったくせに、挙句の果てに冬眠かお前はっ」
 
「だ、だって……」
 
「だってなんだっ」
 
「外は寒いしお布団はあったかいし、それに猫さんはコタツで丸くなるし……」
 

最後の猫は関係ないと思う。
 
関係無いと思うが、突っ込みを入れている余裕など今の俺には無い。
 
いくら登校ダッシュに馴れたとは言え、全力疾走を続けながら激しい論争をするのは厳しい。
 
普通の人間の肺活量じゃ無理だ。
 
名雪?
 
名雪は普通じゃない。
 

「でもさ」
 
「ん?」
 
「やっぱり冬って良いよね」
 
「どこがっ!」
 
「そんな力いっぱい言わなくても……」
 
「空気が冷たくて深く吸い込むと肺が痛い! 全力疾走してると雪が目に入って痛い! おまけに名雪が布団から出てこない!」
 
「私が布団から出ないのはいつもだよー」
 

ケンカ売ってるのかコイツは。
 
ほっぺたでもつねってやろうかと思うが、それの為には俺の『遅刻・早退カード』に印がまた一つ増える事を覚悟しなくてはならない。
 
ただでさえ自分が『良い生徒』である自覚は無い。
 
だからこそせめて遅刻や欠席だけは最小限に留めておきたいのだが、それすらもままならない。
 
世の中は理不尽に出来ている。
 

「今日遅刻したらどうなるか判ってんのか?」
 
「えっと……どうなるの?」
 
「めでたく遅刻回数二桁突入だぞ」
 
「わ、びっくり」
 

しているようには聞こえない。
 

「言って置くがな、進学希望のお前にとって遅刻二桁ってのは致死量に等しいぞ」
 
「私、死ぬの?」
 

いや、死なんよ。
 

「そう言う事じゃなく! 入試のときに不利だって事だ」
 
「わ、そうだったんだ」
 
「誰かさんは部活動の成績があるからチャラになるかも知れんが、少なくとも俺はアウトだな」
 

ちなみに、毎度々々の事ながら遅刻の理由は『寝坊をした』である。
 
正確には『名雪が寝坊したから』なのだが、何を書こうと遅刻は遅刻として扱われる。
 
だったら下手に突っ込まれるような事(同学年の異性と同棲云々)を書かずに、無難な選択をしておいた方が賢いだろう。
 
一度だけ『風が吹いたら遅刻して雨が降ったらお休みだから』と書いたら、速攻で石橋に呼び出された。
 
あの説教は長かった。
 

「ひょっとして……私の所為で祐一に迷惑かけてる?」
 

不意に隣を走る名雪の声のトーンが落ちた。
 
直感的にまずいと思った。
 

「私が寝坊ばっかりしてるから……祐一の内申が悪くなっちゃってるの?」
 

ぎぎぎ、と油の切れたブリキおもちゃみたいな動きで、こっそり名雪の横顔を見る。
 
今にも泣きそうだった。
 
本能的にヤバイと思った。
 

「違う違う! そりゃ遅刻の理由はと訊かれたら名雪の寝坊の所為なんだが、いや別にそれは名雪が悪いって言ってるんじゃなくてつまりその」
 
「……ごめんね、私の所為で」
 
 
ついに『ごめんね』まで出てしまった。
 
壊滅的にヤバイと思った。
 
 
「いやだからそのお前が悪いんじゃなくて強いて言えば布団から出たく無くなるような気温が悪い訳で引いては四季を形成する日本の気候帯が」
 
「……あんまり私が迷惑掛けてるようなら、これから祐一一人で学校に行っても……」
 
「だー! もう、だからー!」
 
「?」
 
「俺は俺が起こしたいから名雪を起こしてるし、一緒に学校行きたいから一緒に行ってるの!
 迷惑だとかこれっぽっちも考えてない、思ってない、感じてない。 OK?」
 
 
びしっと眉間に人差し指を突きつけてやる。
 
 
「い、いえっさ」
 

何故に軍隊調?
 
ま、とにかく朝っぱらから暗い雰囲気になるのは避けられたようだ。
 
後は……
 

「あと何分だっ?」
 
「えっと……わ、あと二分」
 
「ちっ! スパートかけるぞ名雪!」
 
「うんっ。 ……ねぇ祐一」
 
「なんだ」
 
「大好き」
 
「……話に繋がりが見えんぞ」
 
「気にしないで。 言いたかっただけ」
 
「あー、俺も俺がカレーを好きなくらいにはお前の事が好きだぞ」
 
「えー、私カレーと同レベル?」
 
「ハヤシライスより上だ。 光栄に思え」
 
「嬉しくないー」
 
「ああもう喧しい! 走る事に集中せんか!」
 
「うー、うー」
 

唸る名雪を無視し、目の前に迫った校門をダッシュで駆け抜ける。
 
下駄箱にリモコン下駄よろしく靴を蹴り飛ばし、中ズックを手に持ったまま、廊下を猛ダッシュ。
 
途中で追い抜いた白衣のハゲが何事かを叫んでいた気がする。
 
多分あれは教師で、廊下を走るなと言いたかったのだろう。
 
聞こえなかった事にしよう、うん。
 
階段を三段飛ばしで駆け登り、廊下との直角カーブで靴下故に足を滑らせて転び、0.5秒で受身をとってまた走る。
 
後少しで教室に到着すると思ったその時、今まさに教室のドアを開けようとしている石橋の姿が目に入った。
 
まずい。
 
ヤツより遅く教室に入った場合、遅刻が確定申告してしまう。
 
 
「ハイちょっと待った石橋ティチャー! そこで十秒数えて今日一日の幸福を神に祈ってついでにメッカに向かって一回目の礼拝を!」
 
「……判ったから速く教室に入らんか馬鹿者」
 
「理解有る担任で俺は嬉しい! 八百万の神のアガペーが六道輪廻を通してその身に宿らん事を、アーメン!」
 
「お前は何の宗教家だ?」
 
「石橋先生ありがとうございますー」
 
 
背中に名雪の声と石橋の突っ込みを聞きつつ、教室へと駆け込む。
 
激しく開けられたドアの音の所為だけでもないだろう、教室中の視線が一斉にこっちを向いた。
 
しかしそれも一瞬の事。
 
「なんだまたか」とでも言わんばかりに、つまらなそうに前を向く。
 
悪かったな、遅刻寸前がいつも通りで。
 
 
「おす、今日も危なかったな」
 
「……死ぬかと思った」
 
 
比喩表現抜きで。
 
この学校の三年生の教室は三階に位置しており、普通に登るのすら億劫である。
 
しかも俺の場合は校門500m前から継続している『遅刻寸前ダッシュ』の最中。
 
こんな真似をして尚且つ笑っていられるのは名雪ぐらいなものだろう。
 
羨ましいような、そうでもないような。
 
 
「……一時間目は……LHRだよな」
 
 
息も絶え絶えに聞く。
 
ちなみに、LHRとはロングホームルームの略だ。
 
大体この時期に入ると、三年生のLHRは各自の受験勉強に当てられる事が多い。
 
それはつまり俺にとっては睡眠時間と言う事だ。
 
うむ、今日みたいな日には嬉しい。
 
 
「……俺は体力回復のために寝る。 起こしたら……地獄突きだからな」
 
「はいはい。 腐った死体の如く寝てくれ」
 
 
それは御免だ。
 
ゾンビキラーで大ダメージを喰らってしまう。
 
多分ケアルでも。
 
 
 
説明の必要も無いと思うが、通称美坂チームは三年になっても全員が同じクラスになれた。
 
国公立系進学コースだけでも五クラスあるので、全員が同じクラスになれたと言うのは相当な確率の上に成り立っている。
 
問題は久瀬のヤツまで同じクラスになった事だ。
 
何度も言うが俺は久瀬が嫌いだ。
 
そして久瀬も俺の事が嫌いだ。
 
さっきだって振り向きもせずに何事かをやっていたようだし。
 
別に振り向いて欲しいとも思ってないが、そこまであからさまな態度を取られるのもムカツク。
 
むぅ、久瀬の事を考えていたらまた腹が立ってきた。
 
話を変える。
 
 
香里は既に推薦で市内の国立大学に進学が決定している。
 
学部は理工学部。
 
厳密に大学卒業後の進路を決めている訳では無いそうで、大学に通いながら何をしたいかを考えるそうだ。
 
文学系統よりも理学系統の方が自分には合っている、と、思う。
 
聡明な香里らしからぬ曖昧な言葉。
 
確かに、香里には眼鏡と白衣が似合いそうだけど。
 
ちなみに、眼鏡と白衣と言うのは俺の勝手な理学系統のイメージだ。
 
何はともあれ、合格している状況と言うのは非常に羨ましい。
 
遊び放題ではないか。
 
だが、本人はああいう性格ゆえに、合格が決まってからも学校の勉強に手を抜く気配がまったく無い。
 
純粋に凄いと思う。
 
曰く、「当然でしょ? だって『やらなきゃいけない事』だもの」だそうだ。
 
そう言う風に思える事が凄いと言っているのに。
 
 
名雪は受験生街道まっしぐらである。
 
平均評定値は一般推薦枠のボーダーより高いし、陸上部部長と言う肩書きもあるのだから、推薦でも良かったとは思うのだが。
 
如何せん、遅刻回数が多かった。
 
もっとも本人はそれを大した気にも留めず、今日も今日とて遅刻寸前まで寝ている。
 
志望大学は医学系統だと言う。
 
曰く、「猫アレルギーを治す薬を作りたい」だそうだ。
 
夢を持つ事は素敵だし大切だが、もう少し現実を見ような、名雪。
 
千差万別な個々の身体的アレルギーを一概に治す薬なんて、例えブラック・ジャックだって造れないぞ。
 
ヤツは外科医だが。
 
二次志望としては英米文学科を希望しているらしい。
 
どちらも香里と同じ大学にある学部なので、本人の入学意思も高く硬い。
 
部活を引退してからは、放課後に香里と二人で勉強会をしている事も多い。
 
医学部か文学部か、それはこれからの頑張りとセンター試験の結果次第だろう。
 
俺も応援はしてやっている。
 
応援だけだが。
 
 
北川も受験生街道まっしぐら……の筈なのだが。
 
コイツには何かこう真剣さと言うものが感じられない。
 
気負いすぎるのもいけないが、ここまで楽天的だとこっちが心配したくなってくる。
 
多分、誰も見てない所で一生懸命やっているヤツだとは思うが。
 
志望学部は教育学部。
 
高校の先生になりたいとの事だ。
 
クラスの野郎共には色々と揶揄―――女子生徒に手を出して三面記事に載るなとか―――されている。
 
それに笑って答えているものの、俺に希望学部を語った時の目は本気だった。
 
「先生になりたい」、と。
 
だから俺は言った。
 
「なれ」、と。
 
北川の行こうとしている大学は、香里や名雪とは違う大学で、佐祐理さんと舞が通う大学になる。
 
佐祐理さんは心理療養学、舞は児童教育学だ。
 
二人とも北川とは打ち解けているようで、オープンキャンパス等では二人に学内を案内してもらった事もあるそうだ。
 
今年度入学生の中でも注目度トップの二人に案内されるのは非常に嬉しかったが、同じくらい周りの視線が痛かった。
 
後に北川がそう語ってくれた。
 
「香里と同じ大学に行かなくて良いのか?」と、半分冗談半分本気で訊いてみた。
 
そしたら妙に悟った顔つきでこう言いやがった。
 
「追いかけるのは止めた。 俺は俺の出来る事を精一杯やり、その上で美坂を振り向かせる」、と。
 
ちょっと格好良いのがむかついたので蹴りを入れた。
 
足を取ってドラゴンスクリューをされた。
 
痛かった。
 
 
俺は……正直判らない。
 
料理人になりたい気もするし、弁護士になりたい気もする。
 
これを言うと北川の真似みたいな雰囲気が漂うのだが、教師にも憧れる。
 
だが、俺が語るその全ては「夢」であって「進路」ではない。
 
小学生が「宇宙飛行士になりたい」と語るのと同レベルだ。
 
夢を持つのは悪くない。
 
問題は、何処で目を覚ますか。
 
少なくとも高校卒業を控えたこの時期ならば、とうに目覚めていなくてはいけない筈なのだ。
 
それでも俺は……
 
ひょっとすると目覚める時間を判っていたのに、あえて目を覚まそうとしていなかったのかもしれない。
 
大人になりたくないと叫ぶ、無垢で無知なピーターパン。
 
将来の安心と、それによる意思の腐敗を齎す親父の存在。
 
全てに気付いていながらそれでも尚、俺は目を覚ましたくは無かった。
 
逃げの選択として進学を選んだ。
 
先の道が見えない道を。
 
 
また話が暗くなった。
 
話題を変えよう。
 
 
今の俺の席は窓際の一番後ろ。
 
学生にとっては最高とされている席だ。
 
一つ前の席には北川の背中がある事も嬉しい。
 
授業中のヒマ潰し(と言ってもヒマな時は半分以上寝ている)には事欠かないで済む。
 
しかも、俺の隣は空席だ。
 
別に対人恐怖症な訳でも閉所恐怖症な訳でも無いが、広々しているのは良い事だ。
 
香里と名雪は廊下側の端に、これまた仲良く二人で座っている。
 
休み時間などもあの二人の周辺に女子が集まる事も多い。
 
意外でもないが、人望が厚いと感心した事もあった。
 
あ? 久瀬?
 
学生にとっては最悪とされる、真中の列の一番前だ。
 
何を思ったか自分からその席を希望しやがった。
 
まぁメガネだし、眼が悪いのかも知れん。
 
性格も悪いけどな。
 
……ああもう、だから!
 
 
「どうした相沢?」
 
「……寝言だ。 気にするな」
 
「そうだ相沢! 知ってるか?」
 
「知らん」
 
「いや聞けよオイ」
 
 
久瀬の事を考えると、正直面白くない。
 
いや、面白くないまでは良いのだ。
 
良くないけど。
 
問題はそこから先。
 
あいつと対立していると、どうにも『変わり易い』
 
感情を率直に表に出しすぎる嫌いが有る。
 
普段からそんなに感情を押し殺して生きて居る訳ではないが、それでも幾らかは抑えながら生活している。
 
中でも、『怒り』の感情は極力見せないようにして生活している。
 
周りの奴等だって俺が怒る所をめったに見たことは無いだろうし、俺も見せたくない。
 
他人が怒っているのを見て愉快になる奴なんて居ないだろうから。
 
居るとしたらよっぽどの変人だろう。
 
幸か不幸か、俺は今までの人生でそんな特殊な人には出会った事が無い。
 
 
話が逸れた。
 
 
とにかく、久瀬と俺とは相性が悪いのだろう。
 
『変わる』と言ったが、別にそれは人格がとかじゃない。
 
そう……それは『昔』に。
 
感情を剥き出しにして、その所為で傷つくのを嫌い、どんどん薄く鋭くなっていったあの時期に。
 
全てが壊れれば自分が救われるとでも思っていたのだろうか。
 
それとも壊す事でしか自分を保てなかったのだろうか。
 
……判らないな。
 
ただ、俺が判る事は……
 
 
そのおかげであいつ等に出会えたんだよな。
 
 
俺が荒れてなければ。
 
誰かを殴らずに居れば。
 
不良でなければ。
 
敵を作っていなければ。
 
「たられば」話は好きではないが、そんな思いも偶には良いと思う。
 
自分を取り巻く環境の全てに感謝する日があっても。
 
 
なんでこんな事を考えてるんだっけ。
 
思考を紐解き、思い出して遥か前方の久瀬の後ろ頭を見る。
 
少しムカっとした。
 
 
……ただ、ムカツクから、か
 
 
俺が『変わり易い』と言う理由。
 
その理由を変に付けられるより、そっちの方が良かった。
 
日和見主義で悪いが、俺はこういう時だけは日本人だ。
 
『曖昧』な答えを答えにさせてくれ。
 
今は……
 
何よりも……
 
 
 
 
 
眠いから。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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偶然と必然の境目を、人は何を持って判断するのだろうか。
 
経験と、憶測と、情報と、常識と。
 
それで計れるものを必然と呼び、計り知れないものを偶然と呼ぶのだろうか。
 
ならばこれは、果たして偶然だろうか。
 
それとも、必然だろうか。
 
この問いに答えられる人間が、果たして世の中に居るのだろうか。
 
 
 
 
 
優しさと残酷の境目を、人は何を持って判断するのだろうか。
 
慈しみと、蔑みと、微笑みと、嗜虐性と。
 
その中に寵愛が多ければ優しさと呼び、被虐が多ければ残酷と呼ぶのだろうか。
 
ならばこれは、果たして優しさだろうか。
 
それとも、残酷だろうか。
 
この問いに答えられる人間が、果たして世の中に居るのだろうか。
 
 
 
 
 
喜劇と悲劇の境目を、人は何を持って判断するのだろうか。
 
情愛と、悲恋と、喜びと、悲しみと。
 
笑いと喜びが多ければ喜劇と言い、悲しみと涙が多ければ悲劇と呼ぶのだろうか。
 
ならばこれは、果たして悲劇だろうか。
 
それとも、喜劇だろうか。
 
この問いに答えられる人間が、果たして世の中に居るのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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職員室から出てきた石橋の横には、一人の女子生徒がいた。
 
辺りを包む喧騒と、見馴れない雪と、嗅ぎ慣れない冬の匂いに幾分か戸惑いながら。
 
蛍光灯、二重窓、リノリウム、天井の穴。
 
どれも今までとは違い、だけど何処にでも在るような気がして、妙な同調を覚える。
 
奇妙な制服、短いスカート、下着が気になる。
 
だけどそんな事よりも、ずっともっと気になる事があった。
 
少し先を歩く先生―――職員室ではたしか石橋先生とか呼ばれていた―――の背中に、少し躊躇いながら声をかける。
 
 
「あの、先生?」
 
「ん?」
 
「先生の担任しているクラスに相沢祐一って生徒、居ますか?」
 
「ああ、居るぞ。 なんだ、あいつは他県にまで知れ渡るほどの馬鹿だったのか?」
 
「馬鹿……なんですか?」
 
「いやスマン、言葉が悪かったな。 あいつと居るとつい、自分も若返ったような気がして言葉使いがどうも、な」
 
「若返ったような気に……なるんですか?」
 
「どうした? そんな意外そうな顔をして。 こんなオッサンが若返っちゃ変か」
 
 
目を細めてほんの少しだけ笑う。
 
良かった、コワイ先生じゃなさそうだ。
 
とは思うものの、やはりさっきの発言は否定しなければ失礼に値する。
 
慌てて両手をぱたぱたと振った。
 
 
「いえっ、そう言う訳じゃないんです………ただ」
 
「ただ?」
 
 
訊き返した石橋が、瞬間気を奪われるほどの優しい笑顔で。
 
女の娘は半ば独り言の様に。
 
そして詠う様に。
 
 
「ただ………ちゃんとやってるんだなぁって」
 
「なんだ、相沢の知り合いか?」
 
「ええ。 親友ですよ」
 
 
ポニーテールがさらっと揺れた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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いつもより1.5倍増しで騒がしい3‐B。
 
休み時間なので騒がしいのは当たり前と言っては当たり前なのだが、それにしたって喧しい。
 
まったく、受験生としての自覚は無いのか自覚は。
 
久瀬はそんな事を考えていた。
 
だが、自分の感情もとい受験生モードを他人に押し付ける気は無いらしい。
 
コメカミに微妙な青筋を浮かべながら、諦めたように小冊子を閉じる。
 
表紙には『これでバッチリ! センター試験頻出順問題ベスト500 古文編』と書かれてあった。
 
 
「騒がしいな。 いや、普段から騒がしいのだが……」
 
 
相沢の所為で。
 
その名前が脳裏を横切り、また少し不愉快になった。
 
別に今回の1.5倍増しの騒がしさには祐一は関与していないのだが。
 
それでもクラスで巻き起こる騒動の渦中に居るのは―――イチローの打率よりも高い確率で―――祐一なのだった。
 
まったく。
 
毎度毎度毎度毎度。
 
遅刻はする。
 
授業中に寝る。
 
教科書を忘れる。
 
上の三つはまだ他人に迷惑をかけていないが、昼休みに度々乱入していくる下級生はどうかと思うぞ。
 
そもそもが他学年の教室塔へのみだりな侵入は禁止だと言うのに。
 
ここまで考えて、久瀬はその思考を討ち切った。
 
その表情には、幾分かの達観と諦観が見え隠れしている。
 
一年間と言う長い期間を祐一と同じクラスで過ごして、その性格が良い方に変わったのか悪い方へ変わったのか。
 
多分、昔の久瀬にすれば悪い事だと判断される方に変わった。
 
本人は全否定するだろうが。
 
それにしても………
 
 
「なんだこの異様な雰囲気は」
 
「えとね、転入生が来るんだってよ?」
 
 
半ば独り言のような呟きに、久瀬の隣の席の女の娘―――枳殻 沙紀 (からたち さき)―――が答えた。
 
ショートカットのメガネっ娘である。
 
メガネを取ると可愛い、って言うかメガネのままでも可愛い女の娘。
 
一番前の席なのにメガネを掛けている所からすると、相当目が悪いらしい。
 
とにかくそんな女の娘が答えた。
 
 
「ああ、そう言えばそんな噂も聞こえた記憶がある」
 
「久瀬君はそーゆーの、興味無さそうだよね」
 
「興味が無い訳ではないが、実際に本人を見ていない状況でここまで盛り上がれないのも事実だ」
 
 
そう言って辺りを見まわし、ため息をつく。
 
騒がしかった。
 
 
「実際に見てないから、盛り上がれるんじゃない?」
 
「……そんなものかね」
 
「抽象は写実より、より写実的」
 
「誰の言葉だったかな」
 
「あたし」
 
「………」
 
「どーしてそこで無言で前を向くの?」
 
「……どうしろと言うんだ」
 
「いやどうしろと言われても」
 
 
何だかんだ言いながらこの二人、結局は仲が良いみたいだった。
 
 
 
 
 
「あー、席に着け。 ロング始めるぞ」
 
 
チャイムより数分遅れて、石橋の到着。
 
普段は先生の姿が見えれば静まる教室も、今日は静まらなかった。
 
むしろ盛り上がる。
 
なんだ、そんなに俺の登場が嬉しいのか?
 
有り得ない想像に石橋の肩が苦笑で揺れる。
 
 
「先生っ」
 
「何だ斎藤」
 
「このクラスに転入生が来るって本当ですかっ?」
 
 
石橋は頭を抱えた。
 
どうしてこうも生徒と言うのは―――動物的とも言えるような鋭い嗅覚で―――情報を仕入れるのが早いのだろうか。
 
自分は生徒に向かって転入生の情報を漏らした覚えは無いし、他の先生方も然り。
 
言えば当然の如くお祭り騒ぎを起こすだろう生徒たちに、誰が好き好んで餌を与えるものか。
 
飢えた動物に、大好物を目の前にして『マテ』を実行させるのはトップブリーダーですら難しい。
 
 
だが、ここまで来てはしょうがない。
 
何と言っても、噂の転入生はすぐそこ、ドアを一枚隔てた廊下に立っているのだから。
 
 
「その事も含めて、だ。 それとも何か? お前は雪の降り始めたこの時期の廊下に女の娘を立たせたままにしておくような冷血漢か?」
 
 
言うと同時に湧き上がる歓声。
 
主に男子。
 
女の娘だってよ女の娘! なに、おにゃの娘だとっ! お、俺の時代が来た!!
 
鏡を取り出して髪をワックスでねじるのもバンザイ三唱もウェーブも容認してやるが、これだけは注意しておこう。
 
石橋が呆れ顔で言った 「机の上でのブレイクダンスは止めろ、危険だ」
 
言われてから数秒後、懲りずに踊り続けていた剣道部の田中が机の上から―――しかも頭から―――転げ落ちた。
 
鈍い音がした。
 
 
「おい、相沢! 転入生だってよ!」
 
「くー、くー」
 
「起きろって! 起きないと損するぞ!」
 
 
ゆさゆさゆさ。
 
友人としての親切心で祐一を起こす北川。
 
激しく揺すられて、さすがの祐一も寝ぼけ眼で起床。
 
辺りを見まわし、目の前に北川の顔を見つけて、笑顔で喉仏に地獄突きをお見舞いした。
 
 
「ぐえっ!!」
 
「……起こしたら…地獄突き……これ鉄則」
 
 
それだけ言うと、また眠りの世界へと戻っていく祐一。
 
従姉妹の名雪があれだけ『寝雪』なのだから、祐一の寝起きも推して知るべきであった。
 
注意を怠った北川は、まだ痛む喉を抑えつつ、放っておいた方が得策だと考えて前を向いた。
 
 
ガラララララー
 
 
クラス中の好奇の視線を一身に受けて教室に入ってきたのは、紛れも無く女の娘。
 
身長は然程大きくも無く、かと言って小さい訳でもない。
 
背中の中程までに伸ばした髪を、少し高い位置でポニーテールにしていた。
 
後れ毛とアンテナが小さく自己主張。
 
整った目鼻立ちと、切れ長の眉が強い内面を表している。
 
完結に言えば、可愛かった。
 
着馴れていない感の有る制服も初々しい。
 
そして、異常とも言える感動を表しているクラスの男子に少し引いていた。
 
少しおろおろし、だけれどもすぐに落ち着きを取り戻し、教室中を軽く見まわした。
 
あー、全員知らない顔だ。
 
当たり前と言えば当たり前だが、何故かその事に少女は違和感を覚える。
 
救いを求めるように石橋の元へと駆け寄り、二言三言交わした。
 
 
「あの……相……どこ……」
 
「…沢?……窓際の……寝て……」
 
 
その言葉は小さく、教室の中に居る者にはほとんど聞こえていなかった。
 
原因の一つが自分たちの挙げている雄叫びだと言う事にも気付かずに。
 
だが、一番前に座っている生徒には聞き取れたようだ。
 
疲れたようにメガネを外し、メガネ拭きでレンズを拭き、ため息をついた。
 
『また』ヤツか。
 
 
そのため息が自分に向けられたものとは露知らず、少女は何事かを石橋に確認した後、急にすたすたと歩き出した。
 
自己紹介を取り敢えず後回しにして。
 
少し吊り上った眉は、ともすれば怒っているように見えかねない。
 
口元が緩んでいるので、それは無いと思うが。
 
すたすた歩き、たどり着いたのは窓際の一番後ろの席。
 
北川がぼんやり少女の事を見上げ、少女の視線は机に突っ伏して眠りこけている祐一へと向けられ、祐一の視線は夢の中に向けられていた。
 
何事かと教室全体が少女と祐一を見ている。
 
そんな中。
 
少女はゆっくりとその右手を高く挙げた。
 
ほっそりとした指先が綺麗だった。
 
透き通るような白さの手首が綺麗だった。
 
いつの間に脱いだのか、その手には茶色のスリッパが持たれていた。
 
 
思いっきり振り下ろしたスリッパと祐一の頭が奏でる、天高くまで突き抜けるような音が爽快だった。
 
 
 
 
すぱ―――――――ん!!
 
 
 
 
教室中の時が止まった。
 
唖然としている皆と、何故か満足げな少女。
 
そして祐一の時が動き出した。
 
平常時よりも目付きが数段に悪い。
 
寝起きの思考回路は、自分の頭にこんな事をする人物をリストアップ。
 
そしてリストアップされた人物の中から、LHR中に自分の頭に手が届く人物を絞り込む。
 
犯人が割り出された。
 
 
「北川……起こしたら地獄突きだって言ったよな」
 
「ちょ、ちょい待て! 俺じゃないって!」
 
「問答無よ……」
 
 
無用、と言おうとした所でもう一発叩かれた。
 
今時、ドリフのコントでも出ないような良い音が教室に響く。
 
遠くの席で久瀬は思った。
 
ああ、きっと相沢の頭の中は空っぽなのだろう、と。
 
そんな思案はさて置き、さすがの祐一も北川の手とは全然別方向から叩かれたのだから、真犯人に気付く。
 
真犯人に気付き、何事かと思って自分の横に居る少女を見上げ、少女が自分を見つめる視線とぶつかった。
 
 
 
 
時が、止まった。
 
 
 
 
言葉が出てこない。
 
思考も纏まらない。
 
視覚が伝達する情報が巧く脳に伝わらない。
 
途中でパンク。
 
バーストアウト。
 
それはきっと寝起きの所為だけじゃなくて、あまりにも圧倒的な感情の奔流が理性を吹き飛ばしたから。
 
視床下部、前頭葉、大脳新皮質、海馬、松果体。
 
全て役立たず。
 
数秒間、ただ見つめる事しか出来ずに居た。
 
瞬きも、呼吸も、ひょっとしたら鼓動すらも止まってしまったかのような一瞬。
 
そんな永遠の数秒間。
 
俺は一体何を考えて、どんな顔をしていたのだろうか。
 
管理できる情報量を遥かに超えた唐突な事態。
 
ヒトは、混乱する。
 
嬉しいのか、悲しいのか、喜ぶべきなのか、驚くべきなのか。
 
そもそもこれは現実か、それとも泡沫の夢幻か。
 
自分しか頼りにならない筈の自分の感情すらも、自分を裏切ってしまいそうで。
 
なんとか紡ぎ出した一縷の言葉は、それでも言の葉と呼ぶには程遠い小さな、そして情け無い呟きでしかなかった。
 
それでも目の前の少女は満足そうに。
 
『あの頃』と少しも変わらないような声で。
 
目も鼻も口も輪郭も手も指も肌も髪も声も身に纏う雰囲気さえも、泣きたくなるほど『そのもの』でしかなくて。
 
想い出が輪郭を取り戻し、『記憶』から『想い』へと昇華を遂げ、再びリアルを帯びてくる。
 
 
そして今、彼女は俺の目の前に立っていた。
 
全てがどうでも良くなるほど、最高の笑顔で。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「………さ、くら?」
 
「やっほ、元気?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
To be continued………
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